給料の前借りが恥ずかしいと感じる心理を解説します。
「もう食費もギリギリで給料日まで持たない…」「借入もできないし、お金で頼れる人がいない…」など、金銭面でどうしようもない状況は誰でも経験しますが、そんなときに方法の一つとしてあるのが給料の前借りです。
なぜ恥ずかしいと感じてしまうのか、現実的に可能かどうかについても解説します。
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給料の前借りが恥ずかしいと感じてしまう3つの深層心理
急な出費が重なり、次の給料日までどうしてもお金が足りない。そんなとき、「給料の前借り」という選択肢が頭をよぎっても、多くの方が強い抵抗感や「恥ずかしさ」を感じて行動に移すことができません。
この感情は決して特別なものではなく、社会人としての責任感やプライドがあるからこそ生まれる、ごく自然なものです。
その恥ずかしさの裏には、いくつかの共通した深層心理が隠されています。まずはその正体を理解し、客観的に見つめてみましょう。
お金の管理ができない人だと思われる恐怖
社会人として、計画的にお金を管理し、自立した生活を送ることは一つの重要なスキルと見なされています。
そのため、「給料を前借りする」という行為が、「自己管理能力が欠如している」「計画性のない、だらしない人間だ」などのレッテルを貼られてしまう強い恐怖心につながります。
特に、日頃から真面目に仕事に取り組み、責任感を持って業務を遂行している人ほど、この「できない人」という評価を受けることへの恐れは強くなる傾向があります。
会社の評価や人間関係が悪化するかもしれない不安
金銭的な問題を抱えていることが上司や同僚に知られることで、仕事そのものに影響が出るのではないかという、より具体的な不安も大きな要因です。
「経済的に不安定なら仕事のパフォーマンスも落ちるのではないか」「金銭的にルーズな人物として今後の昇進や重要なプロジェクトから外されるかもしれない」といった、人事評価への悪影響を懸念する心理です。
また、社内でうわさが広まり、同情や憐れみの目で見られたり、人間関係がぎくしゃくしてしまったりすることへの不安も相談をためらわせる一因となります。
他人に弱みを見せたくないプライド（自尊心）
お金に困っている状況は、自分の人生が計画通りに進んでいないことの表れのように感じられ、それを他者、特に仕事で関わる人に知られるのは、プライドが許さないと感じる方も少なくありません。
普段、職場では有能で自立した一人の社会人として振る舞っているからこそ、プライベートな、しかもネガティブな「弱み」を見せることに強い抵抗感を覚えるのです。
これは、これまで築き上げてきた自分のイメージ（自己像）を守ろうとする自然な心の働きといえるでしょう。
給料の前借りは法律で認められている？労働基準法の定め
「会社に前借りを頼むなんて、ただのお願い事だ」と思っているかもしれませんが、実は特定の条件下においては、労働者の権利として給料の早期支払いが法律によって定められています。その根拠となるのが労働基準法です。
この法律上のルールを知っておくことは、自分の状況を客観的に判断し、自信を持って会社に相談するための大きな助けとなります。
労働基準法第25条が定める「非常の場合の費用」とは？
労働基準法の第25条には、「労働者が、出産、疾病、災害その他厚生労働省令で定める非常の場合の費用に充てるために請求する場合においては、使用者は、支払期日前であっても、既に行われた労働に対する賃金を支払わなければならない」と定められています。
これは厳密には、未来の給料を「前借り」するのではなく、すでに働いた分の給料を、本来の給料日よりも前に支払ってもらう権利があるということです。
これは会社の福利厚生ではなく、法律で定められた使用者の義務とされています。
「非常時」に該当する具体的なケース（出産、病気、災害など）
法律で定められている「非常時」とは、労働者本人、またはその収入によって生計を立てている家族に、予期せぬ出来事が起こった場合を指します。具体的には以下のようなケースが該当します。
・出産
・病気やケガ
・地震や水害などの災害
・結婚
・死亡
・やむを得ない事由による1週間以上の帰郷
これらの理由で急な出費が必要になった場合、会社は原則として、すでに働いた分の給料の支払いを拒否することはできません。
該当しないケース（旅行、趣味、借金返済など）と会社の任意対応
一方で、個人的な理由による出費は法律上の「非常時」には該当しません。例えば、以下のようなケースです。
・旅行や買い物などの遊興費
・車の購入や高価な商品の購入費用
・友人や知人、金融機関からの借金の返済
これらの理由で前借りを希望する場合、会社に支払いの義務はありません。
しかし、会社によっては福利厚生の一環として「従業員貸付制度」などを設けていたり、個別の判断で相談に応じてくれたりする場合があります。
その場合は、法律上の権利ではなく、あくまで会社の温情や裁量による「任意」の対応となります。
人事・上司に好印象を与える「給料前借り」のスマートな頼み方
給料の前借りを相談する際、その「頼み方」一つで相手に与える印象は大きく変わります。たとえ法律で認められた権利であったとしても、感情的な配慮を欠いた伝え方をしては、その後の人間関係に溝を作りかねません。
会社や上司に誠意を伝え、円滑に相談を進めるための具体的な流れと、そのまま使える例文をご紹介します。
直属の上司に「ご相談したいことが…」とアポイントを取る
いきなり人事部や経理部に駆け込むのではなく、まずは直属の上司に相談するのが社会人としての筋道です。
廊下や執務スペースで立ち話をするのではなく、「少し個人的なことでご相談したいのですが、5分ほどお時間をいただけないでしょうか」と、会議室などほかの人に聞かれない場所で話す機会を設けてもらいましょう。
事前にアポイントを取ることで、相手も心の準備ができ、真摯な態度が伝わります。
誠実な態度で正直に理由を伝える（好印象な伝え方例文）
相談の場では、まず前置きとして、このような相談をすることへのお詫びと感謝を伝えます。そして、嘘やごまかしはせず、正直に理由を話すことが信頼を得るための鍵です。
【例文】
「お忙しいところ恐縮です。本日は、大変申し上げにくいのですが、給与の支払いについてご相談があり、お時間をいただきました。実は先日、家族が急病で入院することになり、急遽まとまった費用が必要になってしまいました。つきましては、大変恐縮なのですが、すでに働かせていただいた分の給与の一部を、給料日より前に支払っていただくことは可能でしょうか。」
このように、①相談へのお詫び → ②正直な理由 → ③具体的な依頼、という流れで話すと誠実さが伝わりやすくなります。
返済計画もあわせて伝えて責任感と計画性を示す
会社側が懸念することの一つに、「前借りをすると翌月の生活がさらに苦しくなるのではないか」という点があります。その不安を払拭するため、自分なりに考えた返済計画や今後の生活の見通しを伝えることが有効です。
【例文】
「もちろん、前払いしていただいた分、翌月の給与が少なくなることは承知しております。その間の生活費については、当面の間、食費を切り詰めるなどして計画的にやりくりするつもりです。ご迷惑はおかけしないようにいたします。」
このように伝えることで、「お金の管理ができない人」ではなく、不測の事態にも責任感を持って対処しようとしている姿勢を示すことができます。
【これはNG】嘘の理由や権利を主張するような尊大な態度は絶対に避ける
「友人の結婚式が重なって…」といった見え透いた嘘をついたり、「法律で認められているはずです」「払ってもらわないと困ります」などと、権利ばかりを主張するような高圧的な態度は相手の心証を著しく損ないます。
たとえ前借りができたとしても、その信頼は失われ、今後の職場での立場を悪くするだけです。感謝と謙虚な姿勢を忘れないことが重要です。
会社の制度も確認！給料の前借りができる主な2つのパターン
法律上のルールとは別に、会社が独自に給料の前借りやそれに類する制度を設けている場合があります。実際に相談する前に、まずは自社の就業規則や福利厚生に関する規定を確認してみましょう。
会社にどのような制度があるかを把握しておくことで、よりスムーズに手続きを進めることができます。主に考えられるのは以下の2つのパターンです。
福利厚生としての「給与前払い制度」や「従業員貸付制度」
福利厚生の一環として「給与前払い制度（サービス）」を導入する企業があります。
これは、専用のシステムを通じて、すでに働いた分の給与の一部を給料日前に受け取ることができる制度です。人事や上司を通さずに申請できる場合も多く、心理的な負担が少ないのが大きなメリットです。
また、より大きな金額が必要な場合のために、「従業員貸付制度」が設けられていることもあります。
これは、会社が従業員に対して、低金利または無金利でお金を貸し付ける制度です。ただし、こちらは審査や連帯保証人が必要になる場合が多く、利用のハードルは高めです。
特別な制度はないが個別の相談に応じてくれるケース
就業規則に明記された制度がなくても、過去に前例があったり、経営者や人事部の裁量で、従業員の個別の事情に応じて相談に乗ってくれたりする会社も少なくありません。
特に、創業から長く続く中小企業などでは、規則以上に人と人との関係性を重視する文化が根付いている場合があります。
この場合は、前述したような誠実な頼み方や、上司との日頃からの信頼関係がより重要になってきます。制度がないからと諦める前に、まずは信頼できる上司に相談してみる価値はあるでしょう。
どうしても会社に言えない…給料の前借り以外の安全な資金調達法4選
会社にプライベートな事情を打ち明けることへの抵抗感が強い、あるいは相談したものの断られてしまった場合でも、まだ選択肢は残されています。
給料の前借り以外にも、急な出費を乗り切るための方法は存在します。
ただし、安易な方法に飛びつくと、より大きなトラブルに巻き込まれる危険性もあります。比較的安全と考えられる4つの具体的な資金調達法をご紹介しましょう。
導入済みの会社なら最も安心「給与前払いサービス」
もし、お勤めの会社が外部の「給与前払いサービス」を導入している場合、これが最も心理的負担の少ない方法です。
多くはスマートフォンアプリなどから、人事や上司を通さずに申請できるため、「恥ずかしい」と感じる必要がありません。
利用できるのは、すでに働いた分の給与の範囲内ですが、数日で指定の口座に振り込まれるなど、迅速性が高いのが特徴です。まずは自社にこの制度がないか確認してみましょう。
生活再建も視野に「緊急小口資金（社会福祉協議会）」
これは、国の公的な貸付制度の一つで、各市区町村の社会福祉協議会が窓口となっています。
低所得世帯などを対象に、緊急かつ一時的に生計の維持が困難となった場合に、無利子または低金利で少額（原則10万円以内）の貸付けを行うものです。
単にお金を借りるだけでなく、生活の立て直しに向けた相談にも乗ってもらえるのが大きな特徴です。審査には時間がかかりますが、非常に頼りになる制度です。
手持ちの資産を活用する「質屋」や「フリマアプリ」
もしブランド品やゲーム機、使っていない家電など、換金できそうな私物があれば、それを活用するのも一つの手です。
急いで現金が必要な場合は「質屋」に品物を預けてお金を借りる（質預かり）、あるいは買い取ってもらう（買取）方法があります。
時間に少し余裕があるなら、「フリマアプリ」で売却すれば、質屋よりも高い金額で売れる可能性があります。身の回りを見渡して活用できるものがないか探してみましょう。
最終手段としての「大手消費者金融のカードローン」
どの方法も難しい場合の最終的な選択肢として考えられるのが、テレビCMなどでも知られる大手消費者金融のカードローンです。
スマートフォンで申し込みが完結し、即日で融資を受けられる場合もあるなど、利便性は非常に高いです。
しかし、当然ながら金利は高く、返済が滞れば信用情報に傷がつく大きなリスクを伴います。利用する場合は、必ず返済計画を立て、必要最小限の金額にとどめる強い意志が必要です。
絶対に手を出してはいけない危険な資金調達の罠
お金に困り、精神的に追い詰められているときほど、人は「簡単」「誰でも」「すぐ」といった甘い言葉に誘惑されやすくなります。
しかし、その手軽さの裏には、人生を破滅させかねない深刻な罠が仕掛けられています。
どのような状況であっても、以下に紹介するような方法には手を出さないようにしましょう。一時の安心と引き換えに、取り返しのつかない代償を支払うことになります。
「簡単融資」を謳うSNSやネット掲示板での個人間融資
SNSやインターネット掲示板で、「お金に困っている人へ」「個人で融資します」といった書き込みを見かけることがありますが、これらはそのほとんどが違法な高金利を要求する闇金業者か、詐欺を目的とした犯罪者です。
一度連絡を取ってしまうと、法外な利息を請求されるだけでなく、身分証明書などの個人情報を悪用されたり、犯罪行為に加担させられたりする危険性が極めて高いです。
個人を装っていても、その実態は非常に悪質な犯罪組織であると認識しましょう。
審査が甘すぎる非正規の金融業者（ソフト闇金など）
正規の貸金業者として登録されていない違法な金融業者の利用も絶対に避けましょう。
「ブラックでもOK」「審査なし」などを謳い、親身な態度で接してくることから「ソフト闇金」などと呼ばれることもありますが、その本質は従来の闇金と何ら変わりません。
一度借りてしまえば、昼夜を問わない脅迫的な取り立てや職場や家族への嫌がらせなど、悪質で違法な手段で精神的に追い詰められます。
完済させずに利息だけを払い続けさせる手口も多く、借金地獄から抜け出すことは極めて困難です。
まとめ：恥ずかしさを乗り越える知識と行動が今の状況を切り開く鍵
給料の前借りを頼む際に感じる「恥ずかしさ」は、責任感やプライドがあるからこその、ごく自然な感情ですが、その感情に囚われて一人で問題を抱え込んでしまうと、より状況を悪化させてしまう危険性もあります。
大切なのは、労働基準法という法律上の知識や、会社ごとの制度といった「正しい情報」を知ること。そして、誠実な態度で相談するという「具体的な行動」を起こすことです。
たとえ会社に頼ることが難しくても、公的な貸付制度やそのほかの安全な選択肢は存在するので、焦らず慎重に検討してみましょう。
