お金の不安は誰でもあるのが普通ですが、どうしてもしんどいと思ってしまう人向けに対処法を解説します。
家族関係や友人関係など、何かとお金のことばかり考えてしんどくなってしまうと、人生そのものが辛くなってしまいます。
お金の心配ばかりで疲れた人は参考にしてみてください。
なぜ?お金のことを考えると「しんどい」と感じる心のメカニズム

将来のことを思うと漠然とした不安に襲われたり、給料日前になると理由もなく気分が落ち込んだり。お金の悩みは、単なる家計の問題にとどまらず、私たちの心に重くのしかかり、日々の活力を奪っていくことがあります。
考えてもすぐには答えが出ないと分かっているのに、頭から離れず、気づけば心配ばかりして疲弊してしまう。この「しんどさ」は、決して特別なことではありません。
実はそこには、人間の脳と心の働きに基づいた、いくつかの共通したメカニズムが存在します。なぜお金のことを考えると苦しくなってしまうのか、その原因を理解することが、漠然とした不安から抜け出すための大切な第一歩となります。
まずは原因となる4つのメカニズムについて解説していきましょう。
「見えない・分からない」ことへの根源的な恐怖
人間の脳は、本能的に「未知」や「不確実」なものを脅威と認識し、強いストレスを感じるようにできています。
これは、危険を避けて生き延びるための、古くからの防衛本能です。お金の不安の多くは、まさにこの「見えない・分からない」という不確実性から生まれています。
例えば、「老後の生活に一体いくら必要なのか」「突然、病気や失業に見舞われたらどうなるのか」「今の自分の支出は、果たして適正なのだろうか」といった問いに、明確な答えが出せない状態。これが、まるで暗闇の中で正体不明の物音を聞き続けるような、じわじわとした恐怖感を生み出すのです。
問題の全体像が把握できていないことが、不安を必要以上に大きく育ててしまいます。
SNSで目にする他人との無意識な比較
私たちは社会的な生き物であり、集団の中で他者と比較することによって、自分の立ち位置を確認する性質を持っていますが、現代社会、特にSNSの世界では、この比較が心を疲弊させる大きな原因となり得ます。
タイムラインには、友人や知人の海外旅行、マイホームの購入、きらびやかな食事といった、人生の「もっとも輝いている瞬間」が意図的に切り取られて流れてきます。
頭ではそれがすべてではないと理解していても、無意識のうちに自分の生活と比べてしまい、「自分だけが取り残されているのではないか」という焦りや劣等感を抱いてしまうのです。
この感覚は、自分自身の状況が客観的に見て悪くなくても、他者との比較によって生まれるため際限がありません。
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一度考え出すと止まらない「ネガティブ思考」のループ
お金の心配事には、一度考え始めると次から次へと悪いシナリオが浮かび、思考が堂々巡りになってしまうという特徴があります。これは「反芻(はんすう)思考」と呼ばれる心理状態で、心のエネルギーを著しく消耗させます。
一つの小さな気がかりが、「もし、この支払いができなかったら」「もし、仕事を失ったら」「もし、家族が病気になったら」と、連鎖的に最悪の事態へと結びついてしまうのです。
このような思考の暴走は、現実には起きていない未来の出来事に対して、あたかも今起きているかのような強いストレス反応を心と体に引き起こし、「考えているだけで疲れた」という深刻な疲労感につながります。
情報が多すぎて「何から手をつければいいか」分からない混乱状態
不安を解消しようと、節約術や投資、副業といったお金に関する情報を集め始めた結果、逆に混乱し、身動きが取れなくなってしまうケースも少なくありません。
世の中にはあまりにも多くの情報が溢れており、中には互いに矛盾する内容や、専門的で難解なものも含まれています。
知識が増えれば増えるほど、「自分にとって最適な方法はどれなのか」「どの情報が信頼できるのか」「何から始めるのが正解なのか」が分からなくなり、行動を起こす前に挫折してしまうのです。
この「決定麻痺」と呼ばれる状態は、問題解決への意欲を削ぎ、「どうせ自分には無理だ」という無力感や、さらなるしんどさを生み出す原因となります。
心配で心が押しつぶされそうなときに試してほしいこと

お金の心配が頭から離れず夜も眠れなかったり、日中の仕事や家事に集中できなかったりするのは、非常につらい状態です。
心が思考の嵐に見舞われているときは、無理に問題の根本解決を図ろうとしても、かえって混乱し、無力感に苛まれてしまいます。
まずは、その嵐を鎮めて、心の安全を確保することが最優先です。
具体的なお金の問題に取り組む前に、心配で押しつぶされそうになった心を少しでも軽くするための、誰でもすぐに試せる応急処置をご紹介しましょう。
いったん思考を強制停止する「お金のことを考えない時間」を作る
不安のループに陥っているとき、もっとも効果的なのは、意図的にその思考を「強制停止」させることです。
まずは「今から1時間だけは、お金のことは一切考えない」と心に決めて、時間を区切ってみましょう。その時間は自分が少しでも心地よいと感じる活動や、何も考えずに没頭できることに意識を集中させます。
例えば、好きな映画を観る、音楽を聴く、温かいお茶をゆっくりと味わう、部屋の片付けや単純な作業に没頭するなど、何でもかまいません。これは、脳を心配事から物理的に引き離し、心の過負荷をリセットするための重要な休息です。
不安な気持ちを紙にすべて書き出して頭の中から追い出す
頭の中でモヤモヤと渦巻いている不安は、具体的な形がないために、より一層大きく感じられます。そうした漠然とした感情を、一度すべて紙に書き出してみましょう。
これは「外在化」と呼ばれる心理的な手法で、頭の中にあるものを外に出して客観視することで、心の負担を軽減する効果があります。
誰かに見せるものではないので、文法や綺麗さなど一切気にする必要はありません。「支払いが怖い」「将来が不安」「自分が情けない」など、思いつくままの言葉を書きなぐるだけで大丈夫です。
頭の中のゴミを掃除するようにすべて吐き出すことで、混乱した思考が整理され、「自分はこんなことに不安を感じていたのか」と、問題を客観的に捉えるきっかけにもなります。
軽い運動で気分転換をはかる(ウォーキングなど)
心の状態は、体の状態と密接につながっています。心配事で頭がいっぱいになっているときは、意識的に体を動かすことで強制的に思考の流れを変えることができます。
特にウォーキングやストレッチといったリズミカルな運動は、ストレスホルモンを減少させ、気分を安定させる脳内物質「セロトニン」の分泌を促すことが科学的にも知られています。
激しい運動をする必要はまったくなく、家の周りを15分ほど、少し速足で歩くだけでも効果はあります。
景色や風を感じながら歩くことで、意識が「考えること」から「感じること」へとシフトし、心と体の緊張が同時にほぐれていきます。
信頼できる友人や家族に気持ちを話してみる
お金の悩みはデリケートなため一人で抱え込みがちですが、孤立は不安をさらに増大させます。もし、安心して話せる友人や家族がいるのなら、具体的な解決策を求めるのではなく、「ただ、今のしんどい気持ちを聞いてほしい」と伝えて話をしてみましょう。
「つらいね」「大変だね」と自分の感情を受け止めてもらうだけで、孤独感が和らぎ、心は驚くほど軽くなることがあります。
自分の弱さを見せ、それを受け入れてもらう経験は、困難に立ち向かうための精神的なエネルギーを回復させてくれるのです。
しんどさの根本原因を断ち切る!お金の不安と向き合う4つのステップ

しんどさの根本原因となっている「お金の不確かさ」そのものと向き合うにはどうしたらいいのか。ここで何よりも大切なのは、焦ってすべてを一度に解決しようとしないこと、そして完璧を目指さないことです。
これまでお金の問題から目をそむけてきたのであれば、最初の一歩を踏み出すのには大きな勇気が必要かもしれません。
以下にご紹介する4つのステップを、ゲームのクエストを一つずつクリアしていくような感覚で、ご自身のペースでゆっくりと、そして着実に進めていきましょう。
ステップ①【見える化】まずは1ヶ月ざっくり家計を把握する
お金の不安のもっとも大きな原因は「見えない」ことです。したがって、最初に取り組むべきは、お金の流れを「見える化」して現状を把握することにほかなりません。
ここで多くの人が挫折するのが「完璧な家計簿」ですが、これはまったく必要ありません。目的は1円単位で収支を合わせることではなく、「自分は毎月、何に、どれくらいのお金を使っているのか」という全体像をぼんやりとでいいので掴むことです。
銀行口座やクレジットカードを連携させるだけで自動的に記録してくれる家計簿アプリも数多くあります。あるいは、レシートをスマートフォンのカメラで撮るだけ、月に一度クレジットカードの明細を眺めてみるだけでも十分です。
まずはこの「見える化」を1ヶ月だけ続けてみましょう。「見えない恐怖」が、具体的な数字という「対処可能な課題」に変わる大きな一歩です。
ステップ②【目標設定】「100万円貯金」ではなく「月5千円の先取り貯蓄」から
家計の現状がぼんやりと見えてきたら次は目標設定ですが、「1年で100万円貯金する」といった壮大な目標は、達成までの道のりが長すぎて挫折の原因になります。それよりも、「まずは給料日に5千円を別の口座に移す」といった、具体的で達成可能な「行動目標」を立てることが大切です。
給料が振り込まれたら、使う前に一定額を貯蓄用口座に自動で移してしまう「先取り貯蓄」の仕組みを作れば、意志の力に頼る必要もありません。
この小さな成功体験の積み重ねが、「自分にもできる」という自信を育て、お金に対する向き合い方をポジティブに変えていく原動力となります。
ステップ③【支出削減】効果絶大!意志のいらない「固定費」の見直し
支出を減らそうと考えるとき、食費や交際費といった日々の「変動費」の節約から始めがちですが、これは「我慢」が伴うためストレスが溜まりやすく長続きしません。
もっとも効果的で心理的な負担が少ないのは、一度見直すだけで節約効果がずっと続く「固定費」の削減です。
例えば、契約したままになっているスマートフォンの料金プラン、あまり利用していない有料のサブスクリプションサービス、必要以上に手厚い保障内容になっている生命保険など、見直せる項目は意外と多く隠されています。
これらは日々の努力や意志の力を必要としないため、気づかないうちにお金が貯まる体質へと改善できる、もっとも効率の良い方法といえます。
ステップ④【収入アップ】今の自分でできる「小さな副業」の可能性を探る
支出の削減には限界がありますが、収入を増やすことには理論上、限界がありません。お金の不安を根本的に解消するためには、支出をコントロールする視点と同時に、収入を増やす視点を持つことも重要です。
もちろん、いきなり大きな金額を稼ごうとする必要はありません。まずは自分の得意なことや好きなこと、持っているスキルを活かして、月に数千円でもプラスの収入を得る経験をしてみましょう。
例えば、読まなくなった本や着なくなった服をフリマアプリで売る、得意なイラストや文章作成のスキルをオンラインで提供する、クラウドソーシングサイトで簡単なデータ入力の仕事を探してみるなど、始められることはさまざまです。
お金が少しでも増えるという事実は、経済的な余裕だけでなく、「自分にはお金を生み出す力がある」という、何にも代えがたい自信を与えてくれます。
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専門家の力を借りる選択肢!お金の悩みを相談できる場所

自分一人でできる対処法や改善ステップを試みても、なかなか不安が軽くならない、あるいは、問題が複雑でどこから手をつければいいのか分からない場合も当然あります。
そのようなときは、決して一人で抱え込まず、その道の専門家の力を借りることが、もっとも賢明で効果的な解決策となり得ます。
専門家への相談は、特別なことでも恥ずかしいことでもありません。客観的な視点と専門知識で絡まった思考の糸を解きほぐしてくれる頼れる存在です。
中立な立場で家計を診断してくれる「FP(ファイナンシャル・プランナー)」
漠然とした将来への不安や家計全体の改善、資産形成といった幅広いお金の悩みについては、「FP(ファイナンシャル・プランナー)」が相談相手として最適です。
FPはお金の専門家であり、個々人の家庭状況やライフプラン(結婚、教育、住宅、老後など)に合わせて、家計の現状を客観的に分析し、改善策を一緒に考えてくれます。
自分では気づかなかったお金の使い方の癖や、より良い保険の選び方、効率的な貯蓄の方法など、専門的な視点からのアドバイスは、まさに「家計の健康診断」といえるでしょう。
特定の金融機関に属さない独立系のFPであれば、中立な立場でアドバイスをくれるため、より安心して相談できます。初回は無料で相談に応じてくれる事務所も多いため、まずは話を聞いてもらうことから始めてみるのも一つの手です。
お金の使い道がない独身におすすめの方法を紹介!使い道が分からない人必見
借金で苦しい場合は「法テラス」や「自治体の無料相談窓口」へ
悩みの原因が収入を上回る「借金」であり、返済の督促などで精神的に追い詰められている状況であれば、相談すべき相手はFPではなく、弁護士や司法書士といった法律の専門家になります。
そのような場合にまず頼りになるのが、国によって設立された公的な相談窓口である「法テラス(日本司法支援センター)」です。法テラスでは、経済的な余裕がない人でも、無料で法律相談を受けられたり、専門家費用の立て替え制度を利用できたりします。
また、住んでいる市区町村役場でも、定期的に無料の法律相談会が開催されていることがほとんどです。
借金の問題は法的な手続きによって解決できるケースが多いため、一人で悩み続ける前に、できるだけ早くこれらの公的な窓口に連絡することが重要です。
心の不調が続くなら「心理カウンセラー」という選択も
お金の問題そのものにある程度の解決の道筋が見えてきたにもかかわらず、不安や落ち込みといった心の不調がなかなか改善しないケースもあります。
その場合、問題の根本は、お金という外的要因だけでなく、ご自身の「考え方の癖」や「ストレスへの対処法」といった、より内面的な部分が関係している可能性があります。
心理カウンセラーや臨床心理士は、そうした心のメカニズムを紐解き、過度な不安やネガティブな思考のループから抜け出す手助けをしてくれる「心の専門家」です。
お金の悩みをきっかけとして、自分自身の心と深く向き合うことは、これからの人生をより健やかに生きていくための大きな財産となるでしょう。
お金がしんどい時にやってはいけない3つのNG行動

お金のことで精神的に追い詰められているとき、不安や焦りから、無意識のうちに事態をさらに悪化させてしまう行動を選んでしまいがちです。
苦しい状況だからこそ、つい手を出したくなる「近道」や「逃げ道」が、実はより深刻な問題へとつながる落とし穴であることも少なくありません。
自分自身をこれ以上苦しめないためにも、以下にご紹介する3つの「やってはいけないNG行動」を心に留めておくことは、自分自身を守る上で非常に重要です。
不安だからと現実から目をそむけ見て見ぬふりを続ける
目の前のお金の問題に向き合うのが怖いと感じるとき、もっとも簡単にできる行動は「何もしない」ことです。
請求書を見ないようにしたり、銀行口座の残高を確認するのをやめたりと、現実から目をそむけてしまう心理は、短期的な苦痛を避けるための自然な防衛反応ともいえます。
しかし、この見て見ぬふりこそが、問題を雪だるま式に大きくしていく最大の原因なのです。家計の赤字は自然には解消されず、借金の利息は時間とともに着実に膨らんでいきます。
問題を先送りにすればするほど、解決のために必要な労力や時間は増大し、結果的により大きな精神的苦痛を伴うことになるので、怖いと感じるときこそ、勇気を出して現状を把握するのがもっともダメージの少ない解決策となります。
一発逆転を狙ったリスクの高い投資やギャンブルに手を出す
「この苦しい状況から一刻も早く抜け出したい」という強い焦りは、正常な判断力を鈍らせます。「簡単に儲かる」「すぐに借金を返せる」といった甘い言葉で誘う、ハイリスクな投資話やギャンブルに心が揺らいでしまうこともあるでしょう。
しかし、一発逆転を狙った投機的な行動は、多くの場合、問題を解決するどころか、なけなしの資金さえも失い、事態を破滅的に悪化させる結果につながります。
家計の根本的な問題が解決されていない状態で投機に手を出すのは、穴の空いたバケツで必死に水を運ぼうとするようなものです。
お金の不安に対する真の解決策は、決して一攫千金の中にはなく、地道な現状の把握と着実な改善の積み重ねの中にしか存在しません。
誰にも相談せず一人で問題を抱え込み続ける
お金の悩みは極めてプライベートな問題であるため、「恥ずかしい」「情けない」「誰にも知られたくない」という気持ちから、すべてを自分一人で抱え込んでしまう人が多くいます。
しかし、孤立は視野を狭め、ネガティブな思考のループを強化し、精神的に袋小路へと追い込んでしまうもっとも危険な状態です。
自分一人だけで考えていると、客観的な視点や新しい情報を得ることができず、ごく簡単な解決策さえも見えなくなってしまいます。
前述したように、信頼できる友人や家族、あるいは専門家といった第三者に話を聞いてもらうだけで、精神的な負担が劇的に軽くなることは少なくありません。
問題を一人で背負い続けることは、解決を遠ざけるだけでなく、自分の心を壊してしまうリスクがあることを覚えておきましょう。